被災した地域の子どもたちへのサポートをと、震災後、たくさんの支援団体が立ち上がり、様々なことを支援して頂いていることに、心から感謝を申し上げます。
これから、子どもたちが楽しみにしている夏休みの時期を迎えるにあたり、原発事故から2年が過ぎる中で見えてきた、大切な問題について、お伝えをさせて頂きたいと思います。
なかなか伝わりにくい、目には見えない放射能についての問題は、当事者である私たち自身も、いまだにどのように向き合っていいのか分からないことがたくさんあります。
目には見えないということがもたらすものは、ほんとうに複雑です。
私たちは、様々なデータや症例、傾向などを情報として得ることで、将来のことを考えることができますが、子どもたちは、生まれてから今までの経験からしか先をイメージすることができません。
大人が思っている以上に、今起こっていることを捉えきれてはいないだろうということを、私たちは、意識する必要があるのだと思います。
例えば、子どもたちに震災当時の気持ちを語らせることや、原発について、放射能について、未来について、思っていること、感じていることを語らせるようなことは、私たち母親でさえ、まだできていないことです。
驚かれるかもしれませんが、様々なことはまだまだ進んではおらず、自分の子どもが何を思いながら日々を過ごしているのかということは、聞くことさえできないほど、私たちの抱える傷は大きいということをお伝えします。
大切に思えば思うほど、簡単には向き合うことができない。
そんな感じだと思います。
聞くことができるとしたら、地震がどれだけ怖かったか、ということぐらいでしょうか・・・
子どもが自発的に話すことに対しては、きちんと受け止めたいと思っていますし、寄り添うことはできている。
何があっても守ってあげるからね!という、必ず伝えなければならない思いは、この問題に向き合っているお母さんであれば、伝えることができていると思います。
しかし、内側にある、どのような言葉を使っていいのか分からないであろう子どもの心に寄り添うことができているかということは、思えば涙が溢れてしまいます。
小さな胸に秘めた、伝えきれない思い・・・
それを手に取ってみることができたら、と思いますが、心の中は親子であっても見ることはできません。
私たちは、子どもを守ろうとすれば、大勢のみんなとは違う立場に立たせてしまい、悲しい思いをさせてしまいます。
うるさいだろうな〜と思いながらも、様々な制約を与えてしまったり、かわいそうだな〜と思いながらも、窮屈な思いをさせてしまっていることに対して、自分を責めているお母さんはたくさんいることでしょう。
ごめんなさいの言葉をどれだけ飲み込みながら、毎日を過ごしているのだろうと、お母さんたちの辛い気持ちを考えます。
私たちは、申し訳ないという思いを傍らに抱え、なんとか急いでこの状況を改善しなければという焦る思いで、様々なはたらきかけをしています。
この子どもたちが大きくなって、いろいろなことが分かるようになったら、なぜ母親たちはあのようなことをしていたのかを理解できるかもしれませんが、今のこの子たちにとっては、意味不明なことに毎日を費やしている私たちです。
先を見て、今を変えようとしていることは、誰に理解をしてもらおうというものではありませんが、切実なこととしてお願いをしたいのは、保養先で、子どもたちの心の蓋を開け、内側を語らせるようなことは、どうかしないで下さいということです。
そのようなことを行っている保養団体が存在するということに、母親たちは心を痛めています。
先日行われた西澤哲さんをお招きしての、子どもたちのトラウマについての講演会の際にも、この問題についての難しさを伺いました。
専門家でさえ、この、目には見えないものへの研究はまだまだ進んでいない中で、素人が扱えるようなことではないということは、認識しなければならないのだと思います。
誠意ある、良識的な専門家の方に、早急にこの問題についての対策を考え、態勢を整えて欲しいということは、お願いをさせて頂いております。
それが整わない今は、まだその時期ではないということを、知って頂きたいのです。
ディスカッションして方向性が見えるほど単純なことではなく、大人でさえ分からないことを子どもたちに語らせることは、してはならないと思うのです。
子どもたちのことを思っての、やさしさからのことだとは思うのですが、どうか、そのようなことがないようにと、お伝えをさせて頂きます。
子どもたちだけで参加する保養プログラムは、保養先でどのようなことが行われているか、私たちには分かりません。
保養に願うことは、綺麗な空気を思いっきり吸い込んで来てほしいということや
以前と同じように、何を気にすることもなく、当たり前に自然の中で過ごしてほしいということ
心を開放して、のびのびと過ごしてほしいということです。
震災後、物凄い勢いで様々な支援団体が立ち上がり、必死に支えて頂いて来たことには、本当に感謝をしております。
受け入れて下さる方々の、思いの深さや優しさ、あたたかさに触れ、子どもたちも、感謝の心を学んでいます。
私たちのために、様々な苦労を乗り越え、大変な活動をして下さっている方々に対して、このようなことをお願いしなければならないことは、本当に複雑で、心が痛むことなのですが、敢えて、お伝えさせて頂きました。
あなたは今、なにを思っていますか?
あの時、どんなことを感じていたの?
そんなことを我が子に聞ける日は、いつなのか・・・
私たちは、今はそれをせず、起こってしまったことに謝罪をしながら、できることしている。
そんな日々です。
どうか、お察し頂ければと思います。
お願い致します。