報告が大分遅れてしまいまして申し訳ございません。
いわき市で子育てをしている母親たちが、原発事故後の子どもたちの環境を守るために立ち上げた、「TEAMママベク」による報告会が、7月5日(土)に行われました。
子どもたちに伝えたいこと… ママからのメッセージ
『被爆後のこれからを考える「TEAMママベク子どもの環境守り隊」測定報告会』
ゲストとして、いわき市で被災をされ、今現在は奈良県にお住いの彫刻家・安藤栄作さん、たらちね理事長の織田好孝さんをお招きし、原発事故後のあり方についてや、子どもを守る姿勢などについて、じっくりとお話を伺いました。
このような事態となってしまった今こそ、子どもたちの未来を守るためには、大人が毅然とした態度でしっかりとした生き方を示さなければならないという力強いメッセージを頂き、私たちは大きく励まされました。
分断を恐れずに表現をすること、行動を起こすことにより厳しい立場に立たされることがあったとしても、揺るぎない信念を抱きながら前進するおふたりの素敵な生き方には勇気を頂き、会場にいらして下さったお母さんたちも、おふたりの頼もしい言葉に頷きながら、涙ぐんでいる方もおられました。
ママベクメンバーの千葉からは、人生の中で最も喜びに満ちた幸せなはずの子育ての時を、原発事故という現実に向き合いながら不安と共に過ごさなければならない母親たちの厳しい現実を伝えながら、子どものことを思い、様々なことを求めようとすることによって周囲から孤立してしまう苦しさや、なかなか思いをくみ取ってもらうことができない厳しい状況について、話をさせてもらいました。
たらちねからは、これまでに積み重ねた貴重なデータから、食品汚染の実態や環境汚染について、測定の結果を報告をして頂きました。
「TEAMママベク」からは、小学校の測定の結果と共に、私たちがこの時代に子どもを誕生させた責任の大きさや、どれだけ多くのものを子どもたちから奪ってしまったのかという母親の心情も伝えつつ、未来を生きる子どもたちのために今こそ立ち上がり、具体的な行動を行っていかなければならないというメッセージをお伝えしました。
いわき市行政の担当者にもお越し頂き、ママベクの測定の結果を受けてのこれまでの取り組みや、今後のことについて、お話をして頂きました。
私たち母親が、教育の現場に立ち入って測定を行うに至るまでには様々な協力をして頂き、測定の結果をお渡ししてからも、何度何度も協議を重ねながら真剣に向き合って頂いたことを、この報告会でみなさんにお伝えできたことも、とても嬉しいことでした。
私たちは未来を見つめ、これからどのようにして子どもたちを守っていくかということを、具体的に形にしていきたいと願っていますが、その思いを受け取って下さり、共に歩むいわき市は、子どもたちにとっても誇れる自治体であると私たちは思っています。
会場には遠方から足を運んで下さった方もいらっしゃいました。他の自治体の方からは「なぜいわき市は、市民の声に対して、そのように理解ある取り組みがなされているのか」という声が挙がっていました。
私たちは、行政と市民と教育の現場が一体となって、地域の大切な子どもたちを守っていくことを望んでいます。そこには否定や批判という姿勢は存在せず、私たちにできることはさせてほしいという切実な思いで測定活動を行っています。
汚染の実態やホットスポットの存在を知ることにより、保護者のみなさんからは「今までなにをやっていたのか」という声が、学校や行政に対して向けられるかもしれませんが、こうして測定の結果を受けて対応をして下さる姿勢を評価して頂きたいと、私たちは願っています。
汚染の実態を隠すことによって守られるものは、子どもの未来ではありません。現実に向き合わなければ、子どもたちは更なる被曝を重ねるばかりです。
私たちが測定に伺った際には、現場の先生方は快く迎えて下さり、必要があれば行政に対策を求めるという私たちの活動に対し、「どうぞよろしくお願い致します。」とおっしゃって下さいました。
いわき市内の小学校、中学校の校長先生、そして、PTA会長さんには、報告会の招待状を送らせて頂きましたが、お越し頂いた先生、PTA役員の方からは終了後、お声をかけて頂き、お話をさせて頂きました。
「子どもたちを守っていきたいという思いは、共にあります。」というお言葉を、私たちは大きな希望の光とし、今後多くのみなさんに伝えていきたいと思っております。
各先生方、PTA会長様はじめ役員の皆様、いわき市行政の担当者様、そして、多くの市民の皆様、お忙しい中をご出席頂きましたことに、改めまして心からの感謝を申し上げます。
私たちは測定の結果から、「TEAMママベク」としていわき市に対し、以下の対策を求めています。
【子どもの環境を守るために、いわき市に求める対策】
・ホットスポットの早急な除染
・早急な除染ができない場合の仮の対策として、いわき市としての統一した看板の設置
・子どもの環境の継続的な測定・公表・対策
・風の強い日の屋外活動の見直し
国が定めた除染対象となる空間線量は毎時0.23µ㏜以上ですが、放射能に対する感受性は、子どもは大人の3倍であると言われています。
子どもたちにこれ以上の被曝をさせないためには、細かい配慮が必要であり、そこに居る時間が短いからと言って、年間被曝量の計算に当てはめて大丈夫だと言い続けることは、やさしい対策とは言えないのではないでしょうか。
私たちは、一刻も早く子どもたちの環境が震災前の状態に戻ることを望んでおり、線量の高い所から、早急な除染を行って頂くことを求めています。
早急な除染ができない場合には、仮の対策として、子どもたちに分かるような目印を設けて、立ち入らないような対策をしてほしいということをお願いしており、具体的には、いわき市としての統一した看板を設置することを求めさせて頂いております。
高い線量が見つかった場合、その対応を各学校の判断に任せるのではなく、いわき市として用意した看板を、各学校に配布して、対応を統一させてほしいというのが私たちの望みです。
また、測定の結果からは、継続的な測定や対策の必要性があるということが分かりました。
原発事故はまだ収束はしておらず、放射性物質は今も放出され続けています。その事実を踏まえて、未来ある子どもたちを守るために、長期的な対策を行って頂くことを求めています。
高濃度の土壌汚染が見られるところや防砂ネットが高線量であるということから、今も放射性物質が大気中を飛散しているという可能性が伺えます。
風邪の強い日に、砂煙が舞い上がった状態で行われている屋外活動についても、もう一度見直しをして頂くことはできないかと言うことも、お願いをさせて頂いております。
呼吸による内部被ばくを防ぐため、原発事故が起こったという目線で、教育現場の対応を検討して頂くことを私たちは望んでいます。
また、子どもが過ごす環境は学校だけではなく、通学路や公園などについても、安全が確保できているとはまだまだ言えない状況です。それらの場所についても早急な測定を行うと共に、必要な対策を継続的に行ってほしいということも、お願いをさせて頂いております。
2013年10月から2014年1月にかけて行いましたいわき市内の小学校の測定の結果につきましては、「いわき放射能市民測定室たらちね」のホームページにて報告をさせて頂いております。
http://www.iwakisokuteishitu.com/mamabeku.html
測定機器や測定方法につきましても、そちらをご覧ください。
2013年度の時点で75校あった小学校のうち、19校からホットスポットが見つかりました。(ホットスポットとは、国が除染の対象として定める基準、毎時0.23µ㏜を超える場所を指します。)
原発事故後の子どもたちの環境は、モニタリングポストで管理をされているということになってはおりますが、広い敷地に1台設置されたモニタリングポストだけでは、子どもたちの安全を確かめることは難しいということが、測定をするほどに分かることとなりました。
また、土壌の測定の結果からは、空間線量だけでは把握することのできない、震災後の子どもたちのリスクについても確認することができました。
原発事故から3年が経った今、空間線量も下がってきており、様々なことは心配する必要がないような雰囲気になってきていることは、教育の現場でも言えることだと思いますが、測定の結果からは、まだまだ楽観視はできないということが分かりました。
測定を行う中で、以下のようなところが比較的汚染がたまりやすく、ホットスポットになりやすいということが分かりました。
・防砂ネットや防球ネットの近く
・フェンス沿いや木立、植込みの近く
・苔の生えているところや、枯葉や汚泥の集積場
・雨樋の下、プールや倉庫の裏手
汚染の最高値を示した小学校につきましては、春の運動会を前に、除染を行って欲しいということをいわき市行政にお願いをし、緊急除染を行って頂きました。
子どもたちの更なる被曝を防ぐためには、汚染の実態を具体的に示すことが必要であるということを、改めて感じることとなりました。
朝日新聞さんが報告会について記事にしてくださいました。
ありがとうございました。
http://digital.asahi.com/articles/ASG775D0LG77UGTB00K.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG775D0LG77UGTB00K
福島)いわき全小学校で空間線量測定 市が追加除染
2014年7月11日03時00分
いわき市の母親グループが市内の全75小学校(昨年度当時、分校含む)で空間
放射線量を測り、結果を公表した。これを受け、市は1校で独自に「追加
除染」も行った。市教育委員会によると、市内の教育施設での追加
除染は初めて。
調査したのは、母親8人で活動する「TEAMママベク子どもの環境守り隊」。昨年10月から今年3月にかけて、GPS連動型の空間線量自動記録システムを使って、各校の敷地内の空間線量の濃度分布図をつくった。このとき、線量が高かった地点では改めて地上1メートル付近で3回測り、平均値から線量を算出した。また、そこの土は市民が野菜などの放射性物質濃度を測定するNPO法人に持ち込んだ。
守り隊は、75校中19校で、国による除染の長期目標である「年間1ミリシーベルト」に相当する毎時0・23マイクロシーベルトを上回った、と市に通知。市教委が4月に改めて19校の空間線量を測った結果、16校に0・23を上回る地点があることが判明した。
とりわけ高かったのが、中央台南小(同市中央台鹿島2丁目)の校庭の毎時0・4〜0・5マイクロ。市が5月14日、校庭の37平方メートルの土を入れ替える追加除染を実施したところ、同0・12〜0・18マイクロまで空間線量の値が下がったという。
追加除染は通常、国と協議のうえ国の交付金で実施するが、今回は市の負担による単独実施だった。その理由について、市除染対策課の担当者は「運動会の実施が迫っており、協議する時間が無いと判断した」と述べ、あくまで例外だと強調している。残る15校は同0・3マイクロ程度といい、追加除染に向けて国と協議する構えだ。
5日にいわき市内であった測定結果の報告会には、約60人が集まった。メンバーの千葉由美さんは取材に「行政を批判せず、『地域の子どもを守る』という同じ目線で思いを重ねた結果だ」と話した。
調査結果はNPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」のホームページ(http://www.iwakisokuteishitu.com/)で閲覧できる。(伊藤弘毅)
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「TEAMママベク」は、小学校の測定を終えた後、希望のあった私立の幼稚園の測定を行い、その後、公立の幼稚園の測定を行いました。今現在は、中学校の測定を行っています。
今後も継続して活動を続けて参りたいと思っています。引き続きのご協力を、どうぞよろしくお願い致します。